機械工学の研修(案)
- tomohisa kumagai
- 2022年6月18日
- 読了時間: 3分
エンジニア育成の為の社内教育プログラムを考えていた時のこと。
学問領域としては、機械工学とデータサイエンスの2つを盛り込みたいですが、教育が難しいのは機械工学の方。データサイエンスは、昨今教材も沢山あり、コンピュータを使って実習を楽しみながら学べる方法には困りません。しかし機械実験となると設備もいるし、設備も多岐に渡り簡単に揃えられる代物でもなく。(パソコンが1台で多目的に使えることと対照的。最近は電子工作にも最終兵器FPGAが登場ですか。え、モノの試作には3Dプリンタがあるでしょって?いやまあそうなんですけど、それちょっと違う。)
年に2回、社用車のタイヤ交換をする機会があるので、これを題材にしたらどうかと。ホイールのボルトを締めながら機械屋が考えることを理解できるようになれば。

理想は、ハブの回転中心とホイールのリム(タイヤと嵌合する部分)の回転中心が一致すること。
精度には大きく2種類あり、1)面内振れと2)面外振れ

ホイールを取り付けるときに2)面外振れを排除するには、ハブ・ホイール双方のフランジ面を綺麗にすること。(錆を落とす等)そもそもの加工精度も100%はあり得ないが、それは簡単には調べられないので、信じるだけ。
1)面内ブレはさらに4つの成分があり、ア)ハブボルト5本の中心(座標値の平均)の誤差、イ)ハブボルト個々の位置の誤差、ウ)ホイールボルト穴5個の中心(座標値の中心)の誤差、エ)ホイールボルト穴個々の位置の誤差
しかしア)とウ)は簡単に調べられないので信じるだけ。
結局、ボルトの締め方で対処できるのは、主にイ)とエ)。そして多少は1)。となる。
次に、ボルトナット。座面がテーパーになっている。平座面なら、位置はボルト外形とボルト穴で決まるが、テーパーの場合はナットを締めるに従い、ボルトネジと座面テーパーで決まる。ナットを締めると、初めは(遊びの範囲で)適当だった位置から中心に向かって動こうとする。

教科書には、「ボルトは対角線順に、数回に分けて締めるべし」と書いてあり、実際の作業はそうなのだが、考えずに手を動かすのではなく、以上の原理を理解しておきたい。
5箇所のボルト・ナットの1か所を締めると、締めた箇所が自分の中心に動こうとするので、他のナットは横方向に引っ張られることになる。(位置に多少の誤差がある前提。)結果的として、他のナットも多少締まる。(座面の荷重が大きくなり、ボルト軸力が大きくなる。)
そういう訳で、対角線順にナットを数回に分けて締めてゆくと、最後のナットは締めずに規定トルクに達することがある。実際自分が丁寧に作業すると、最後のナットは僅かな増し締めで規定トルクに達するが、これが正しい。メカニズムを理解していないと、もっと締めるつもりだったナットを、対角線順を一巡して戻ってきたところで、全く回さずにトルクレンチがカチッと反応したりして物足りなく感じるが、その直感を信じてはいけません。こんなはずじゃ無かったと増し締めしてはいけません。他のナットを締めた影響で、自動的に締まったのですから。
以上が教育プログラムで伝えたいと妄想した内容。どうでしょうかね。
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