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TESLA試乗して感じたこと

  • 執筆者の写真: tomohisa kumagai
    tomohisa kumagai
  • 1月22日
  • 読了時間: 4分

TESLAディーラーでModel3に試乗してきました。

SDV(Software Defined Vehicle)の代表例として新しい世界観を期待していましたが、その点ではそれほど目新しさは感じませんでした。


一方で、「走り」の良さに驚きました。良く言われるEVの動力性能よりも、操安性が抜群と感じました。前後左右Gに対するロールやピッチが極端に少なく、路面に貼りつくような安定感と接地感。そして、ステアリング操舵に対するリニアな応答。「シンプル・ダイレクト・スムーズ」、そんな言葉を想起させる、これまで経験したことのない運転体験でした。


比較のため、同価格帯の日本車(スポーツセダン、ストロングHEV)も試乗しました。操安性については、やはりModel3には独特の良さがあったと再確認できた一方、こちらは「重厚なおもてなし」、そんな言葉を連想する運転体験でした。例えば、ステアリングホイールの暖房機能など、細かな配慮にTESLAとは異なる魅力がありました。


比較試乗を終え、Model3について自分としては以下のように捉えました。(注:もっともらしい言い方ですが、想像です。)

  • バッテリーを床下に並べていることや、フロントボンネットの中はラゲッジスペースになっているなどのレイアウトから、極端に低重心・低ヨー/ピッチモーメントで、これが安定性と回頭性の両立に寄与しているのだろう。

  • エンジンマウントでフローティングマウントされるエンジン(という重量物)がないので、シャシーの振動がシンプル(低周波の共振モードが無い)で、優れた接地感やノイズのない運転フィーリングが得られているのだろう。


イーロン・マスク氏のものづくり

ところで、こちらのYouTube動画で、Elon Musk氏の考える、ロケットやクルマの開発について説明しています。


ポイントは2つあり、

1)設計よりも、製作(ManufacturingやProduction)の方が難しいことを理解していない人が多い。(ものづくりに関わっている我々はそうでもないかもしれませんが。私が新卒で就職した会社(メーカー)でも、「現場・現物・現実の三現主義」を標榜しておりました。それに近い感覚を、意外にもMusk氏が持っているのだと思いました。)

2)まず設計要件をしっかり作る。次に工程の無駄を排除する。最後に自動化する。特に、要件は安易に作らずに、責任の所在を明確にした上で、疑ってよくよく吟味すること。順序を間違えてはいけない。(Musk氏自身の失敗例として、EVのバッテリーに貼っていたグラスファイバーマットで工場が苦労したのに、よく確認したらマット自体不要だった、という話をされています。要件が間違っていたのです。YouTube動画の22分03秒あたりからで、Musk氏やTESLAでもこんな失敗するのだ、と平和な気持ちになれます。)


要件定義を明確にすること、は昨今のモデルベース開発の文脈で強調されることも多く、それ自体に異論がある方はほとんどいらっしゃらないと思いますし、日本の自動車づくりにおいても、多かれ少なかれ取り入れられている考え方だと思います。


日本車の「おもてなし」

TESLA車を試乗して感じたことは「シンプル・ダイレクト・スムーズ」。

日本車を試乗して感じたことは「おもてなし」。


「おもてなし」とはそもそも何なのでしょうか。


某サービス業についての解説サイトでは、「相手を思って、対価を求めず行う心遣いのこと」「サービスに関するマニュアルはなく、訓練や先輩の背中から学ぶ」などとの説明も見られました。要するに、明文化できない、要件定義などできない、過剰や冗長を厭わない、そのようなウェットな側面が、「おもてなし」にはあるのだろうと思うのです。


「要件を明確にして、無駄を排除する」TESLAの開発スタイルに則れば、必要な「おもてなし」の要件をすべて明文化するべし、となるのでしょうが、そういうやり方とは相反するものが「おもてなし」なのかもしれない。そして日本は、世界でも有数の、おもてなし文化の国でしょう。


こう考えてくると、今回のTESLA車と日本車で感じた違いは、重心位置云々の機械的な問題よりも、より根源的な文化の違いから生じる個性なのかもしれない、そんな風に思うのです。

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