今回は、科学技術計算用途でPythonを使いたい場合の環境設定に関するお話です。
1)Anaconda/Minicondaを使う理由
Pythonを「とりあえず」動かしたい場合、ついつい最短コースで、Windowsに直接インストールをしたくかもしれませんが、これは全くお勧めしません。理由は、ライブラリのバージョン管理ができなくなるからです。ライブラリ毎に別々のグループが開発を進めているPythonでは、「あるライブラリを動かす為に、別のライブラリのひとつ古いバージョンが必要だ,…」というような悩み(ライブラリバージョン間の競合を解決しなければならない)が日常的に発生します。ここでAnaconda/Minicondaを使うと、複数の用途毎に分けて環境を設置できる(仮想環境)だけでなく、ライブラリをインストールする上でバージョン間の競合を解決してくれるのです。
更にもうひとつ、NvidiaのGPUを使ってTensorFlow(深層学習)を動かしたい場合には、NvidiaからCUDA+cuDNNをインストール(これもバージョン選択に気を遣う)する必要がありましたが、Anaconda/Minicondaを使えば、これもTensorFlowをインストールすると自動的に行ってくれまして、大変楽になります。
仮想環境だけであれば、Python搭載のvenvも広く使われていると思いますが、科学技術計算やデータサイエンスを行うのであれば、Anaconda/Minicondaが使いやすくてお勧めです。
2)Anaconda/Minicondaの選び方
Anacondaには、無償版と有償版(本稿執筆時点では、一番安いStarterで一人月9ドルからがWebに掲載。)がありますが、商用利用と200名以上企業には無償版の使用が許されていません。対して、軽量版であるMinicondaは、あらゆるユーザーが無償で利用できます。(2022年にAnaconda Inc.に直接照会済み)インストール時のストレージ容量もコンパクトで済む(Anacondaよりも初めにインストールされるライブラリが少ない)ことから、当社でもMinicondaをよく使っています。
(もちろん、活用が広がったところでは、Anacondaに予算を投じて頂くこともご検討ください。有償版には、Jupyter Noteが便利になる初期設定がされているとか、サポート提供等メリットがあります。そして、良いものが継続できるためには、お金が回らないと。個人的な意見ですけど。)
base環境に入るライブラリというのは、初めに入っているものというだけで、後から自由にいくらでも追加できますから、Minicondaで困ることは特にありません。本ブログでその方法を紹介します。
以下では、Minicondaのインストール方法をご案内します。
3)Minicondaのインストール手順
ダウンロード
Condaの公式サイトからMinicondaのダウンロードサイトへ辿り、適宜OSやPythonのバージョンを選択してインストーラーをダウンロードします。普通は、Windowsの64bitです。下図のように、SHA256ハッシュが表示されているので、ダウンロードしたexeファイルが改変されていないことを確認できます。
インストール
ダウンロードしたMiniconda3-latest-Windows-x86_64.exeをダブルクリックすると、インストーラが走ります。
次の画面ではライセンスの確認が表示されます。Condaに含まれる、cuDNNやIntel Math Kernel Libraryについても記載があります。よく確認して問題なければI Agreeを押しましょう。(無償なのに、ライセンス!?と思われた方。有償無償を問わず、著作権を含む基本的な権利は、開発者に帰属します。これを、一定の条件で使用する許可をもらう、そのための手続きが、このLicense Agreementです。だから、ここで合意できない場合には使用ができません。)
続いて、インストールタイプの選択です。通常は、Just Me(今ログイン中のアカウントへのインストール)を選択します。All Usersを選ぶ場合は、PCを複数人で共有していて、かつcondaプログラムを一元管理したい場合でしょうか。
次は、インストールディレクトリの指定です。デフォルトではユーザーフォルダ(C:/Users/ユーザー名/)の直下に設定されていますが、変更したい場合は任意のフォルダを指定できます。
次にインストールオプションの選択です。
Add Miniconda3 to my PATH environment variableは、Minicondaを環境変数PATHに登録する設定ですが、他のアプリとコンフリクトの原因になりうるため非推奨と。(インストール後にコマンドプロンプトに必要なPATHが追加設定されたAnacondaプロンプトが使えるようになるので、そちらを使うのが通常です。以下でもこの方法を紹介します。)
Resister Miniconda3 as my default Python3.10は、レジストリに登録する設定で、VSCodeやPyCharm等サードバーティ―製プログラムが、PC上のPythonとしてMiniconda環境をプライマリ(デフォルト)の環境と判定できるので推奨と書いてあります。Minicondaで作るPython環境を今日からメインで使うよ、という場合はそのまま推奨に従がえば良いでしょう。
インストールが完了したら、スタートメニューにAnaconda Prompt(miniconda3が追加されていることを確認してください。以降このAnacondaプロンプトで作業を行います。
(次回に続く)
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